2021年8月17日
「癒しパワー」の持ち主、S先輩
久々に介護の話題を。
介護老人保健施設(老健)に勤務していた当時、
同じ現場にSさん(仮名)という素晴らしい先輩がいらっしゃいました。
スタッフからも利用者さんからも、絶大な信頼を寄せられている方です。
見習うべきところがたくさんあるSさん。
その中でも抜きん出ていたのは、
「ただその場にいるだけで、利用者さんたちが穏やかになってしまう」
という魔法のような癒しパワーでした。
Sさんがその場にいるだけで、
柔らかくて、ほのぼのとした空気が流れるんです。
私が所属していたフロアは、認知症の利用者さんが多い現場でした。
夜勤の時間帯は、利用者さんが不穏になったりして、
事故や事故未満の出来事(ヒヤリハット)が増えることが多いのですが、
Sさんが夜勤を担当する日は、
「みなさん良眠。事故・ヒヤリなし。」となる打率がものすごく高いのです。
ある日、利用者さんを歩行介助しながら誘導している時の
Sさんの声かけが、かなり小さいことに気づきました。
そのことがきっかけで、Sさんに色々お聞きしてみました。
Sさんが利用者さんと接する時に心がけていることは、
・必ずアイコンタクトをとるようにしている。
・その人に伝わればいいので、声かけは大きくなくて大丈夫。
・職場から一歩出たら、仕事のことは一切忘れるようにしている。
そして休みの日は、自分の好きなことをしてリフレッシュする。
そうすると、次に現場に入った時も利用者さんに優しく出来るから。
とのことでした。
・ ・
私は早速マネしてみたのですが、ことごとく失敗しました(涙)。
今から思うと、Sさんの「外側の行動」をなぞっているだけだったんですよね。
そして利用者さんの表面的な反応に
表面的な反応で返してしまっていたのです。
一生懸命お手伝いしようとすればするほど、ドツボにはまり、
利用者さんとのコミュニケーションはかみ合わず、
介助のタイミングもズレてしまったりすることがよくありました。
「Sさんと私では、そもそも人間の出来が違うのだ」
と思い、私はしょっちゅう落ち込んでいました。
比較による仮説
さて、アレクサンダーテクニークを学び、実践していく中で、
私の中には「ドツボ時代」とは違う視点が、少しずつ養われているように思います。
今の私が考えていること。それは、
周りから高く評価されている、
ある人の「いいプレゼンス (存在感・在り方)」って、
ご本人にとっては、あまりにも当たり前過ぎて、意識化出来ていない要素がたくさんあるのでは?
ということです。
Sさんについても、ご自身が思っている以上に、
彼女の無意識のアンテナがキャッチした
「Sさん独自の景色」がたくさんあったのではないか?
でも、ご本人にとっては、あまりに自然に出来ていることなので
言語化までに至らなかったのではないか?
そんなことを想像しているのです。
以下は、私の「悪い例」と比較してみての仮説です。
・利用者さんの表面的な反応に振り回されていた私が見ていたのは、
文字通り、利用者さんの「表面的な領域」。
↓
・対するSさんは、
表面に昇って来ている利用者さんの表現 (反応)を見つつも、
もっと「深い領域」にあるものが、
何となく見えていたのではないか?
目の前の利用者さんの外側ではなく、
存在の根源的なところにコンタクト出来ていたのではないか?
(「小さな声かけでも伝わる」という認識からも、そのことが窺える)
↓
お互いの「存在の深い領域」が、つながった上でのコミュニケーションなので、
利用者さんも安心感を持つことが出来たのではないか?
これが今の私の仮説です。
(後編へ続く)