絵本『まぼろしのおはなし』と、わたし。

2022年12月28日

緑の鳩 ハト 鳩

今日は、今月出会った素敵な絵本をご紹介します。

『まぼろしのおはなし』

作/ハイメ・ガンボア
絵/ウェン・シュウ・チェン
訳/星野由美
出版/ワールドライブラリー

まぼろしのおはなし WORLDLIBRARY
まぼろしのおはなし。絵本を通じて、世界と出会い、世界を知るきっかけをつくる。世界中の絵本を子どもたちにとどける、新しい取り組みWORLDLIBRARYです。

 

この物語りの主人公は、なんと「おはなし」なのです。
(本でもなく「おはなし」というところがまた素敵。)

これは、自分のことを「まぼろし」だと思っていた「おはなし」が、「ほんもののおはなし」だったのだということを知る、
というお話です。(あくまで、私の解釈ですが)

 

私は図書館でこの絵本を手に取り、
ベンチで読みながら
人目もはばからずボロ泣きしました。

「何が、自分の心をこんなに揺り動かしたんだろう?」
自分の心をのぞいてみました。

いくつか思い浮かびました。

多数派じゃない者の心細さ。

自分にどう敬意を払ったらいいのか分からない、という戸惑い。

触れられることで感じる、自分を他者へ預けてしまうことへの恐れ。

そして、
「自分って一体どういう存在なんだろう?」という根源的な問い。

以下、「ネタバレでもOKだよ」という方だけ、お読みくださいね。

 

緑の鳩 ハト 鳩

 

主人公の「おはなし」の住まいは図書館です。

図書館にいる他の「華やかなおはなしたち」に憧れを持っています。
そして「自分は誰の目にも触れない存在なのだ」と思っています。

誰かに自分の存在を知ってもらいたいけれど、知られることを恐れてもいます。

それは「からっぽの自分」を知られたくないから。

何より、からっぽな自分に「自分が」がっかりするのが恐いから。

そもそも「自分がどういう存在なのか」も自分では分からない。
本当にここに存在するのかさえ、分からない。

だから、自分をどう扱ったらいいか分からないし、大切にしたくても、どうしたらいいのか分からない。

 

そこへ、ある「人間の女の子」がやってきます。

女の子は「手で触れる」ことで、おはなしがどういう姿をしているのかを「読み取り」、おはなしに知らせてくれます。

おはなしは「まぼろし」なんかじゃなかったのです。
「からっぽ」なんかでもありませんでした。

真っ白なページにつづられた「おはなし」は、目ではなく「手で触れた人にだけ」、おはなしを伝える存在だったのです。

「おはなし」はその時、初めて「自分のほんとうの姿」を知ったのでした。

 

こんなすばらしいおはなしは、ほかにはない。

ただ、ちょっと ちがうだけ。

色とりどりの鳥のはねのように。さまざまな人のかおのように。

大きなイチヂクの木の、かぞえきれない木の葉のように。

(「まぼろしのおはなし」より)

 

緑の鳩 ハト 鳩

私は「おはなし」と「女の子」のいきいきとしたやり取りに、惹きつけられました。

この「女の子」は、
おはなしを無理やりはげましたり
教訓めいたことを言ったりしません。

「おはなし」に純粋な関心を持ち、
「触れられること」を恐れているおはなしに敬意を払い
「触れて読むこと」の許可を得ます。

 

「おはなし」を大げさに飾り立てたりもしないし、もちろん、さげすんだり、憐れんだりもしない。

淡々と「ほんとうの姿」を伝え、
喜びや楽しさを分かち合います。

そこが、素晴らしいなと思います。
「おはなし」が「自分のほんとうの姿」を心から喜ぶ気持ちが、読んでいる私にもじんわり伝わってきました。

 

緑の鳩 ハト 鳩

 

私の中には
主人公の「おはなし」と
「女の子」の2人が同時に存在しています。

今の時点では、割合的には「おはなしさん」の要素の方が多いかなぁ?

「おはなしさん」の気持ち、とてもよく分かります。

「からっぽな自分」にがっかりするのも恐いし、未熟な自分を人に知られるのも恐いです。

でも、その「恐れ」も大事にしたいと思っています。
恐れや劣等感にフタをせず、淡々とつき合っていきたいなと思っています。

 

私はアレクサンダーテクニーク教師です。

他者と触れ合って、お互いの自己セルフのコーディネーションを伝え合い、分かち合う職業です。

「アレクサンダーテクニーク」というワークを通して、人の心身に触れるのが、私の仕事なわけですが、

今後たとえ、私の経験や技術が進歩、進化したとしても、

触れられることで感じる、

「自分を誰かに預けてしまうような心細さ」

「今の自分が無くなってしまうような恐さ」

忘れないでおきたいなと思っています。

 

そして、願わくば
この「女の子」のように、

「ありのままの自分」を知られること、そして知ることを恐れる気持ちを大切にしながら、

「私たちはまぼろしなんかじゃないですよ」

「ほんとうの姿セルフを分かち合いましょう」

というまなざし、在り方を
誇張することなく、淡々と体現できるような人間になりたいなぁと思っているところです。

 

さて!!

こちらは翻訳者、星野由美さん
この絵本を翻訳するに至った経緯を書いてくださっている記事です。

とても感動的です。
私は震えました(笑)
是非お読みください!!

10.5 2021【一歩また一歩、どこまでも遠くへ】
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STAY SALTY is a web magazine that publishes the thoughts of people who are engaged in attractive activities along with their photos. In times like these, we wan...

 

そして、星野由美さんのサイトはこちらです!
【ころりん ころらど】

ころりん ころらど COLORIN COLORADO
スペインやラテンアメリカなど、スペイン語の絵本を紹介します。

星野さん、素敵な絵本を日本語にしてくださって本当にありがとうございました!!

 

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