「存在」に敬意を払うこと。

2020年9月8日

種と芽アイコン(うす緑)

アレクサンダーテクニークの学校に入る前、
私は介護老人保健施設(老健)に勤めていました。

介護現場では「利用者さんの尊厳を守る」ということが、
とても大事にされています。

ですが、お恥ずかしいことに、
私にはこの「尊厳」と言う言葉がどうにもしっくり来ていません。
ちょくちょく職場の上司や同僚に、
「尊厳ってなんだと思いますか?」と聞いていたのですが、
いまいちピンと来ませんでした。
勤めている間も自分なりに考え続けていたのですが、
結局「これだ!」という解釈には至りませんでした。

 

現場から離れてみて、
「介護」というくくりもとっぱらって、改めて考えてみました。
今思っていることは
「その人の存在そのものを大事にし合う」ということです。

性別、学歴、能力、肩書などの「属性」や、
こういう人だから、こういう実績があるからという「条件」を外したとしても、
今この瞬間の、その人という存在そのものが唯一無二であるということ、
そのことを大事にし、認め合うということ。

それが尊厳ということなのではないかなと思っています。

最近よく耳にする「ガワ」(外側、皮)を外し、
ただ1人のわたし、ただ1人のあなた、ただ1人の誰々さん同士になって、
お互いを敬うということですね。

 

「その人の歴史を敬う」。
「利用者さんは、私たちの大先輩」。

こういうことも現場でよく言われていました。
そのことに異論はありません。

でも、目の前の利用者さんに対して
「この人はこういう経験があるから、尊敬しなければならない
となってしまうと、
いつの間にか「条件付け」でその人を評価する方向に
向かってしまうかもしれない。

じゃあその条件が外れてしまったら、その人の価値は無いのか?
と言ったら、やっぱりそんなことはないと思うんですよね。

 

歴史もコミコミで、そしてそれがあってもなくても、
ただ1人の誰々さんと
ただ1人のわたしが、
今日の、今この瞬間に出会っていますね。
お互い、調子がよくても悪くても、
貴重な出会い、時間ですよね。

現場で、そういう関わり方が出来ればよかったのかもなぁと
今にして思っています。
ちょっとした後悔、反省ですね。

種と芽アイコン(うす緑)

アレクサンダーテクニークのワークは、
「人間の機能」というものを扱っています。
わたしも、あなたも、誰もが持っている機能。
常に働き続けている機能。

お互い持っている機能が、
よりよく働ければいいですね。
協働作業でそれをやってみましょう。

レッスンでやっていることって、
究極こういうことなんだと思います。

誰にでも備わっている機能=プライマリーコントロール。
お互いのプライマリーコントロールが出会って、
働きかけ合います。

働きかけによって、その人の全体が統合されていき、
内側から輝き始めるのを見ると、
自然と尊敬の念が湧いてきます。
すごくすごくシンプルなことです。

ガワのあるなしはもうどうでもよくなって、
「すごいなぁ。やっぱりみんな持ってるんだなぁ」
と驚いたり感激したりするのです。

 

こんなふうに、機能というところに立ち返って見てみると、
「存在そのものに敬意を払う」というのは、
ごくごく当たり前のことになっていくのです。

種と芽アイコン(うす緑)

 

(「ガワのあるなしに関わらず・・」から、
タイトルを変更しました。2021.5/14)