手は、在り方を伝える。

2020年12月29日

もう20年近く、同じ美容師さんに髪を切ってもらっています。
岩下さんという、男性の美容師さんです。

いつもいつも、お店に伺って色々お話を聞くたび、
「岩下さんって、すごいなー。いつか、みんなにこれを聞いてもらいたいなぁ。」と思い、
密かに記録をつけていたのですが、
ご本人にご快諾頂いたので、
満を持して!時々こちらでエピソードをご紹介していこうと思います。

手と手

今回は、私がまだ介護の仕事をしながら、習い事としてアレクサンダーテクニークを習っていた時のお話。

シャンプーやドライアーの時の「手」の使い方が、
新人さんと岩下さんとでは明らかに違っていたので、軽い気持ちでお聞きしてみました。

クマ「お客さんの頭に触る時、
気をつけていることとか、心がけていることはありますか?」

「はい。イライラしてたり怒ったりしてると、
手からそれが伝わっちゃうと思うので、気持ちを切り替えてから向かうよう
にしてます。」

お~~~、マジすか~~。予想を上回る答え~~!

「歯医者さんに行ってて思ったんですが、
力の加減で、ただでさえ痛いのが、ますます痛くなったりすることってある
じゃないですか?
あれは避けたいな~と・・。」


クマ「どうやって切り替えるんですか?」

「う~ん。自分としては”脳を切り替える”みたいな感じです。
いくつかあるんです、脳が。
イライラしてるのはお客さんのせいでもスタッフのせいでもなくて、
自分のせいなので。。。自分では意外と冷静なんですよね。」

つまり、なんとな~く「心地よい手」が出来ちゃっていたのではなく、
彼の中で、ちゃんと明確な方針があって、意図的にやっていることだったんです!

・まず、自分の状態・在り方が、手を通してお客さんに伝わってしまうと知っている。
・だから、自分の「在り方を切り替える」。

これって、方向づけ(ダイレクション)じゃーん!

そしてね。
「自分の在り方が、手から相手に伝わってしまう」ってことに気づく人と、
そうでない人といると思うんですよね。
長年働いているから気づくかと言ったら、必ずしもそうじゃない気もするし
・・。
そのことについてお聞きすると、

「そうですね。そう思います」と。

やっぱり分かってた。

歯医者さんの例でも分かるように、彼は、観察力が素晴らしいのです。
自分や周りにいる人を観察、分析し、
そこからヒントを見つけ出して、
いつしか「自分の技」にしている。

私が不思議だなと思い、岩下さんにお聞きするたび、
パっと手品のタネみたいなものを明かしてくれる。
それをお聞きするのが、毎回とても楽しみなのです。

私よりもず~っとお若いのですが、
密かに「心の師匠」とお呼びしています。

 

岩下さんは、長年お勤めだったチェーン店から
去年独立して、新しいお店を構えました。

お店の名前は『FREDRIKSON(フレドリクソン)』
実は、あの「ムーミン」に出てくる「発明家フレドリクソン」という人?から
お名前を拝借したそうです。

フレドリクソンは、親友のために
「沈まない船」を作ったそうです。

そのフレドリクソンさんの精神を受け継ごうという、
岩下さんの思いが込められたお店。
そして今、岩下さんがこのお店の船長さんというわけです。

船長さん、これからもどうぞよろしくお願いします!

沈まない船