今を生きる決意:ドラマ「俺の家の話」

2021年2月7日

長瀬智也さん主演のドラマ「俺の家の話」を毎週楽しみに見ています。
あらすじなどはこちらを↓
俺の家の話 – Wikipedia

第3話について、心が動いた場面がありました。
ネタバレが困る方は、ご遠慮下さい(笑)
(以下、演者さんの敬称は略。)

 

このドラマは毎回、息子が父の入浴介助をするシーンで閉じられています。

主人公の寿一(長瀬)が、
父親である寿三郎(西田敏行)が湯船に入っている隙に、
父の書いていた「エンディングノート」(やりたいことリスト)を密かに開きます。

このリストは、
後妻業疑惑のあるヘルパー、さくら(戸田恵梨香)と一緒に、
父が横書きのノートに書いていたものです。

「さくらと プロレス観戦」
「さくらと スキューバダイビング」
「さくらと バンジージャンプ」

など、青春願望がダダモレで、
寿一をはじめ子供たちが苦々しい思いで見ていたリストでした。

父親は能楽の人間国宝ですが、
脳梗塞で舞台で倒れてからは、自宅で介護を受けています。
移動はもっぱら電動車椅子。(脳血管性認知症もあり現在要介護1)

が、家族やさくら協力の元、治療やリハビリが順調に進み、
なんと介護認定が要介護1から要支援2に下がったのです。

家を出てプロレスラーになり、
長い間能楽をやめていた長男の寿一や、
孫たちに稽古をつけたりしているうちに、
どうやら、父の生きる力が少しずつ回復していたようなのです。

「ジジくせえ」と嫌がっていたシルバーカーも
自ら使って歩くようにもなります。

そして、先にお話したラストの入浴の場面。

寿一は、父との会話から
「エンディングノート」に新たな一文が加えられたことを知ります。
書かれていたのは、ページいっぱいに筆で縦書きで一言。

もう一度
 舞台に立つ

恐らく、さくらと一緒ではなく、たった1人で書いた「やりたいこと」。
横書きで書いていた今までの文とは全く違う趣でした。

筆(カラー)

今まで横書きで書いていたのは、やってみたかったこと。
そして筆で書いたものは、「今やりたいこと!」。

父、寿三郎は青春にチラっと憧れつつも、
「もう一度、今を生きよう」と決めたのだと思います。
等身大の今を生きることで、失敗したり人に気を遣わせてしまったりするかもしれない。
カッコ悪い姿をさらすかもしれないけれど、
死ぬ前に、今やり続けたいことを彼は見つけたのでした。

ドラマには老いや介護、コロナ禍、人生の再出発など、今を映す問題がたくさん出てきますが、
1つ1つの問題に注目する、というよりは、
まるっと「ある家族の物語」として私は見ています。

ひとクセもふたクセもあって、
余計なアレコレをやらかす登場人物たちにも、我がことのように共感。

家族って「至らない自分の さらし合いユニット」なんですよね。
他人から見たら笑っちゃうようなことでも、
本人たちは真剣に悩んだり、こだわったり、嘆いたリするわけなのです。

 

そして、このドラマの見どころのひとつが
主演の長瀬さんの身体表現だと思います。

プロレスラーになったり、
出戻り能楽師になったりして、
身体で心情を表現していく様が素晴らしいです。
きっと回を重ねるごとに、寿一の表現力は花開いていくんだと思います。
そうそう。考えてみたらプロレスラーも、
リングで「役」を演じている表現者だったんですよね。

長瀬さん最後の出演ドラマとのことで(淋しい)、
私も1話1話、味わって見ようと思っています。