2021年4月17日
今日はアレクサンダーテクニーク独特の技術である
「ハンズオン」(hands-on)について
私が思っていることをお話したいと思います。
こういうのはどうでしょう?
ハンズオンをひとことで言うと、
「気づきを促したり、方向性をガイドしたりする手の技術」
ということになると思います。
基本、アレクサンダーテクニークのレッスンでやっていることって、
「こういうのはどうでしょう?」という提案だと私は思っています。
その「こういうの」が言葉では伝えきれないことがあります。
そんな時、私たちは手を使って提案していきます。
たとえば、
こんな風に、全体のつながりを考えてみるのはどうでしょう?
こんな風に、やめてみるのはどうでしょう?
こんな風に、方向づけるのはどうでしょう?
こんな風に、注意を向けるのはどうでしょう?
エトセトラエトセトラ・・。
つながりってどういうこと?
やめるってどうやるの?
方向づけることと、動かすことってどう違うの?
こういうことって言葉で伝える努力は必要ですが、
限界があるのです。
さらに「普段やってるやり方・捉え方」から脱していくことを
大事にしているワークでもあるので、
なおさら言葉で伝えるのは難しい。
というわけで、
「こんな風に」の提案と、「体験」を結びつけること。
それがハンズオンの大きな役割だと私は思っています。
教師養成トレーニングの学校では、
「考えてもらうための手だよ」と私は教わりました。
「いいこと」のワナ
では、提案する内容は何かと言いますと、
アレクサンダーテクニークの原理に基づいた、人間に備わっている機能や構造を活かすための、アイディアやヒントなどの情報です。
当然「よりよいことをもたらす情報」
だと思ってこちらは提案します。
もしかしたら生徒さんにとっては
「未知の体験の提案」かもしれません。
違和感を持ったり、驚いたリ、
あるいはちょっと恐いなと思ったりするかもしれません。
そして、こちらの提案を採用するかしないかは
生徒さんに委ねられることになります。
そう。
一方的に受け入れるのではなく、
「不採用を選ぶ」ことも出来るのです。
「こういうのどう?」と、
「やってみよっかな?」の
合意があって初めて、いいワークに発展していきます。
でもね。
人間というやつは
「いいものだ」と思うと、
強烈に人に勧めたくなります。
気づかないうちに、
押しつけ、命令、強制をしてしまいます。
私たちは、普段から言葉でも手でもこういうことを
人にやってしまいがちです。
言葉にしろ、手にしろ、
誰かに「何かいいこと」を伝える、教えるということには、
そういう危険が潜んでいるのです。
手は「提案の手」
さてさて。
誰かに「いいこと」をすぐに聞き入れて欲しい自分がいたとして・・。
そんな自分を、
「あ~こんな自分がいるんだな~」と
気づいて受け入れつつ、
その自分を滅するのではなく、
その自分と助け合いながら、
「今、このタイミングで
何を、どう伝えたら生徒さんの助けになるか?」を考え、選び、
「こういうのはどうでしょう?」と手で伝えること。
それが教師養成トレーニングで学んだハンズオンだったんじゃないかな?
と私は今思っています。
(トレーニング期間は3年間、1600時間以上。いやはや長いですなぁ。)
端的に言うと、
ハンズオンはいわゆるゴッドハンドではありません。
人間の手です!
やってることは全然神秘の技ではありません。
でも、
「提案することの訓練」を積んだ
人間の手、だと思います。
手は、「提案の手」なんです。
★こちらもご参照下さい!
→ チェアワークでやっていること。